長文になっております。地域福祉に関心のある方はぜひ読んでいただき、ご意見を下さい。
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「障がい児・者と地域の交流が、十分ではない。」
とあります。これについては木津川市福祉に関するアンケートでも同様の結果が出ています。障がいを持つ人が地域から孤立しているという状況が継続しています。これは私達の社会構造に起因する問題でもあります。学齢期には「支援学校」「支援級」という分離があり、社会人になれば「作業所」くらいしか選択肢がないという実状。社協だけが頑張って解決できる問題でもないわけです。出来ることとしては、学校においては普通級で過ごす時間を増やす、普通級のあり方を見直す、支援学校と通常学校との交流を増やす、一般企業での雇用を増やしてくなどが考えられます。これら分離の課題は国連障害者権利委員会が日本政府に対して是正勧告が繰り返し出ているものです。文科省の遅々とした変化に期待するのではなく、木津川市独自でインクルーシブな社会をどうやって作っていくかを模索せねばなりません。
新しい取組みに挑戦しなければ、未来永劫「共に生きる」は実現しないでしょう。
p.37
「こども達とのスポーツや昔遊びなどの文化活動、地域住民との交流活動(京のまなび 教室)等を実施している。今後は、コーディネーターの育成とボランティアの確保が必 要。 」
とありますが、第3次でも同じ内容が記載されていました。第三次計画期間に改善があったのかなかったのか、具体的にどういった育成と確保をしてきたのかを具体的に書いてください。
p.37
「イベント等開催時は、要約筆記や手話通訳を配置するなど、誰もが参加しやすいもの となるよう配慮しているが、要約筆記者等の高齢化、減少が今後の課題となっている。」
とありますが、第三次においても手話通訳・要約筆記の育成が課題だと書かれていました。現在、本市において要約筆記奉仕員養成事業、手話奉仕員養成講座が実施されていると思いますので、少なくともその成果を書かれてはどうでしょうか。それでも足りませんので、広く市民に重要性を知ってもらう工夫が必要です。
p.38
こどもの見守りについて、市は「木津川市 子供の移動経路/通学路等の安全推進会議」 において国・府・警察等関係機関と連携し安全対策に関する協議や意見交換を行っ た。
とありますが、この書きぶりではどう改善していくのか見えません。市民アンケートでは交通安全についてどんな答えがあったのでしょうか。自由記述から読み取ったものはないのでしょうか。
安全推進会議はありますが、あくまで市全体の機関です。最も必要なのはそれぞれの小学校区毎の「安全ネットワーク」です。現在、これがある地域とない地域があり、子ども達の通学路の安全性がしっかり担保出来ていません。市内全小学校区毎に安全ネットワークを作ること、安全推進会議はその牽引役、アドバイザーとして働くべきです。そのためには自治会や社協との連携が重要になると思います。数値目標も作って取組むべきです。
p.40
「自主防災組織未設立地域に対する設立の支援が必要である。」
これも繰り返し記載されている文言ですが、達成率が上がっていないようです。前期の計画期間でどんな取組みがされ、どんな成果があったのか。読み取れません。
本市の自主防災会の組織率は全体で78.4%とまだまだ低い。地域別で木津は80.4%、加茂は60.9%、山城は95%と地域格差もあります。地域がやる気になるのを待っていては組織化は遅れるばかり。一方で災害はすぐそこに迫っています。やり方を変える必要があるのではないでしょうか?他市の成功事例などを研究し、早急に新しい取組みを始めてください。
p.41
「地域懇談会への一般市民の参加が少ない」
ということです。これもまた第三次と同じ内容です。これについてどういった取組みをされたのでしょうか。記述がありません。改善できなかったのでしょうか。それはなぜだったのでしょうか。そして、今後増やすには何をすべきなのか?具体的に書いてください。
P.48
今後の方向性
「地域への参加の基礎となる自治会や社協支部の活性化を図るとともに、地域活動へ の参加意欲が向上するような情報提供やイベント企画等に取り組みます。」
とありますが、どのように活性化するのでしょうか。例えば私は加茂在住ですが、身近に社協はありません。南加茂台に加茂支部があり、遠くて利用しづらい状態です。もし加茂支所内に支部があれば気軽に利用できるでしょう。なるべく身近な場所に支部がある状態を実現すべきではないでしょうか。
p.49
社協は「誰もが参加しやすいサロン活動等の小地域活動を充実させます。」
市は「小地域活動に関する情報提供の充実を図ります。」
とありますが、本計画で実現のための具体的な事業が見えません。第3次計画にも類似の記述がありました。小地域活動は第三次計画において一体どうなったのでしょうか。数値の比較もされておらず、漠然とした内容のままです。具体的にどこの地域で小地域活動を増やす予定だったのか、新規に達成されたのかされていないのかすら不明なものです。
p.49
市民は「参加しやすい雰囲気づくりにより、自治会への新規加入者を増やします。 また、役員の育成や女性役員の確保に努めます。」
とありますが、参加しやすい雰囲気づくりとはどんなものか、女性役員の確保には何が必要なのか、記述がなく茫漠としています。具体的に書くべきです。例えば自治会長が女性の比率が○%であるから、これを○%に上げていくなどの数値目標が必要です。また、障壁となっている男性優位の社会のあり方について、どのように意識(とりわけ高齢男性・女性)を変革していくのか具体的な取組みが必要です。
p.58
市は「すこやか木津川21健康プランの目標の達成に向けて、事業内容を充実させ、取組を推進していきます。」
とありますが、具体的な事業が一切書かれていません。第三次にも類似の記述がありました。何が出来て何が出来なかったのか。全く不明になっています。
p.59
ファミリー・サポート・センターなど、住民参加型サービスにより保育ニーズ に応えるだけでなく、世代間交流などを促進します。
とありますが、第三次の計画の中で「有償の活動となるため母子家庭や低所得の方は利用しづらい。」と指摘がありましたが、解消はしたのでしょうか。
p.67
社協は「常設型の災害ボランティアセンターとして、平常時には研修や訓練を実施 し、災害時には被災者への生活支援と被災地の復旧・復興支援に取り組 みます」
とありますが、第三次計画とほぼ同じ内容になっています。全くといっていいほど同じ文言であることに違和感があるのと、やはり認知度は低いまま5年が過ぎたのでしょうか。認知度を上げるにはどうすればいいのか。取組みに問題はなかったのでしょうか。PDCAサイクルというなら、検証をしっかりしてください。
p.68
社協は「地域における見守り活動の推進や、警察との連携の強化により、防犯活 動、交通安全活動を支援します。」
とありますが、具体的にどういった支援をしているのか分かりません。実際に目にしたこともありません。現在、市内のどこで社協がどういった交通安全活動を展開されていますか。具体的に書いてください。そして、私の住む地域について言えば、通学路の安全が徹底出来ていない状況が続いています。是非社協の力も借りて安全確保をしたいです。
p.68
市は「ホンデリングプロジェクトを通し、支援の輪を広げます。」
とありますが、ホンデリングプロジェクトの説明が見当たらず意味が不明です。用語解説が必要です。市民に伝えようという丁寧な姿勢を見せてください。
p.84
高齢者配食サービス事業
第三次計画には担い手不足の問題に言及していましたが、今回の計画には出て来ません。しかし担い手問題は解決しておらず、課題はそのままです。打開策を本気で探らねばなりません。
p.88
今後の方向性
○市と社協の連動体制による事務局機能を強化し、地域福祉推進のための財源確保と 有効な事業運営に努めます。
○クラウドファンディングなど新たな財源確保を検討していきます。
これは第三次計画の内容と全く同じです。なぜ、一言一句同じなのでしょうか。この5年間で何も進まなかったのかどうかも分かりません。記載内容が同じ理由、そしてこの5年間どうしてきたのか等を明記してください。
【主な取組み】
○社協版ふるさと納税等新しい取組を検討します
ふるさと納税については批判もあるところですが、社協としてどういった理由から取り組まれるのでしょうか。
p.89
「コミュニティビジネスの先進事例研究や啓発活動を行います。」
とありますが、コミュニティビジネスの定義がこの計画で明確ではありません。どういったビジネスなのか、本市において実現可能性はどうなっているのか等具体的に情報提供してください。このままでは意味が伝わりません。用語解説が必要です。
p.91
2 進行管理 (1)PDCAサイクルによる進行管理
とありますが、P計画、D実行、C評価、A改善のうち、最も大切な「評価」「改善」が欠けている・不十分に思えます。それは多くの内容が第3次と一言一句同じになったりしていることに現れています。PDCAサイクルが適切に出来ていないということです。なぜ、出来ていないのか。チェック機能を確実に働かせるためにも第三者による検証システムを導入されてはいかがでしょうか。
【この計画に書かれなかったこと】
○人権啓発協議会
第三次計画では⇒
市では「人権啓発協議会」を組織し、人権文化のつどい、人権啓発講演会をはじめ、 人権の保護・尊重に向けた取組を実施しています。
と明記していましたが、今回の第四次計画では「人権啓発協議会」という言葉自体が姿を消しています。人権啓発協議会の働きが明確でありません。市のHPを見ても、人権啓発協議会の議事録も無ければ委員名簿もなく、活動実態が全くブラックボックスになっています。人権啓発協議会の活動を市民に公表すべきです。まずは議事録の公開・委員名簿の公開から始めるべきです。そのうえで、人権啓発協議会の機能が適正かどうかの判断がされるべきです。本計画においても人権啓発協議会について明記してください。
○福祉タクシーチケット、正式名称は「障害者福祉タクシー等利用券」について。
第三次計画においては「市は巡回バスを運行するほか、福祉タクシーチケットの交付、教習費や車の改造費 助成などを行っていますが、より日常的な支援の充実に向け、ニーズや地域の実情 に即した支援体制をつくっていくことが課題となっています。」と書いていました。支援体制を改善していく、と読み取れます。
一昨年の12月議会で市民からの請願が可決され、障がい者福祉タクシー等利用券が年額12000円のうち年額2000円を上限にガソリン券として利用できる制度改正がありました。しかしながら、これについての説明がありません。現実に行われた改正について計画に書きこんでください。
○令和元年度木津川市地域福祉計画策定委員会委員名簿
○第3次木津川市地域福祉活動計画策定作業部会 実施要項
○3 次木津川市地域福祉活動計画作業部会 委員構成
○計画の策定経過
○用語解説
これらは第三次計画において、資料の最後に「資料編」として添付されていました(用語解説は注釈をつける方式)が、今回の計画には添付されていないものです。なぜ、今回のパブリックコメントで情報が提供されなかったのでしょうか。どんな理由があったのでしょうか。基本的な情報であり、私達市民には知る権利があります。どんな委員がこの計画について検討していたのか。どんな手法で行っていたのか。すべて重要な情報です。これが添付されなかったというのは残念で仕方ありませんし、市や社協に対する印象を悪くするものです。
添付しなかった理由を明確にすると同時に、計画決定後は必ず委員名簿などの情報も併せて公開するようにしてください。
○社協の認知度向上
「社協については、青年層を中心に社協自体及び活動・事業内容について認知度 が低いことから、青年層に参加してほしい活動、参加しやすい活動など、わかり やすい情報提供と若い世代が興味を持ち参加できるイベントなどを検討してい くことが必要です。」
これは第三次計画に書かれていた内容です。社協の認知度が低いことが課題である、広報が必要だと言っています。しかし、今回の計画にはそのような内容が一切書かれていません。認知度が向上したのでしょうか。そうは思えません。依然として社協について知らない人が圧倒的に多いのが現状です。何をやっている団体なのかも分からないと感じている人も多いです。
民間事業者のように地域包括支援センターを運営する一面もあれば、行政のようにボランティアセンターを運営する一面もある。社協という小さな箱に多様な機能を持たせすぎなのではないでしょうか?分かりにくいのも当然かもしれません。分離・分割して民間事業者として実施する部分、社会福祉法人として実施する部分、NPOなどの形態で継続する部分と切り分ける必要があるのではないでしょうか?また、業務の中には本来は市が担うべきメニューも多々ありそうです。組織や在り方そのものを整理してはどうでしょうか。
○募金活動のあり方
社協の分かりにくさの一つに募金活動「歳末たすけあい募金」「赤い羽根共同募金」が大半の自治会活動の中に「断りもなしに」組み込まれている(そうでない地域もあるかもしれません)ことです。多くの自治会において募金の事実上の「強制」が行われています(強制ではないと明示する自治会もありますが、依然として募金は行っているなどの実態もある)。一般的に募金や義援金というものは目的がはっきりしていることが重要です。大地震の被災地支援、豪雨災害の被災地支援や目的が明確なクラウドファンディングなどです。しかし、この「歳末たすけあい募金」「赤い羽根共同募金」については使い道が抽象的で分かりづらく、動機付けが弱いと考えます。この募金集めの方法も見直す時期に来ていると思います。
【その他全体について】
○この計画の主体は一体誰なのか?それが最も分かりづらく感じました。「市民」「社協」「市」と三者が主語になっているようにも見えます。京田辺市の計画には計画の主体は「市民」「ボランティアNPO」「民生委員・児童委員」「地域福祉に関する事業者」「社協」「行政」と明快に定義しています。当計画の主体について、改めて定義すべきではないでしょうか。
○京田辺市の同様の計画では11頁を割いて前期計画の検証と改善の指摘をしていますが、本市の計画においては8頁に留まるうえに計画の実行というより現状を嘆いているものが多く感じました。京田辺市のそれは①市・社会福祉協議会で取り組んだことを列挙し、その次に②地域で取り組んだこと、③市民アンケートから把握できること、④その他統計資料等から把握できることを明記しています。PDが①②でCが③④でしょうか。はっきりと書かれており分かりやすく感じました。本市の計画も、このように理解しやすく書くべきではないでしょうか。